ブログ

結晶群の一般化のアルゴリズム by Katsuhiko TANI

*リース積(wreath product)の応用 by TANI

群を分解してそれを構成する群を調べたり,2つの群$$H, A$$の積で大きな群を構成するときに,群の直積$$H\times A$$や半直積$$H\rtimes A$$が役に立つ.結晶構造の対称性を記述する群と,それを舞台に発現する特性の対称性を記述する群との関係を研究するときにも,この方法論は必要となる.非正規の拡大を扱う必要があるのだが,群の拡大理論を適用しがたい困難な問題である.特性空間に群を拡大し一般化するとき外部半直積が登場したが,さらに一般化するのにリース積が必要になる.

半直積

群$$H, A$$および群準同型$$f_{a}: A \mapsto \textrm{Aut} H$$($$H$$を自分上で変換=自己同型群)が与えられたとする.
$$a_{j} \in A$$の$$H$$への作用を$$f_{a_{j } }$$と表す.このとき$$HA$$(直積集合$$H \times A$$)の積則を,
 $$(h_{i}a_{j}) \cdot (h_{k}a_{l}):=(h_{i}f_{a_{j } }(h_{k})a_{j}a_{l})$$ のように拡張すると群をなす.

群$$HA$$の要素$$a_{j}h_{k}$$は,一般には可換でないので,$$(h_{i}a_{j}) \cdot (h_{k}a_{l}):=(h_{i}h_{k}a_{j}a_{l})$$のように直積では書けないが,$$H$$が正規部分群であれば,適当な$$f_{a_{j } }(h_{k}) \in H$$があり,$$a_{j}h_{k}= f_{a_{j } }(h_{k})a_{j}$$と書ける.
この群を$$H$$の$$A$$による半直積といい,$$H \rtimes A$$と表す.

群$$H$$も群$$A$$も群$$G(=HA)$$の部分群ならば,$$H \rtimes A$$は内部半直積という.
もし,$$H$$の元と$$A$$の元が可換(群$$H$$も$$A$$も正規部分群)であれば,直積のままで群をなすが,
一般には,$$H$$が正規部分群,$$A$$は非正規部分群なので,この場合の直積の一般化が内部半直積である.

$$h_{i}, h_{k}\in H$$,  $$a_{j}, a_{l}\in A$$
$$ h_{i}a_{j}\cdot h_{k}a_{l}=h_{i}(a_{j}h_{k}a_{j}^{-1})a_{j}a_{l} =h_{i}h_{k}^{a_{j})a_{j}a_{l} $$
$$h_{k}^{a_{j } }\in H$$

■実例

 

$$G=4mm=\{1, C_{4}, C_{2}, C_{4} ^{-1}, m_x, m_y, m_a, m_b\}$$
$$ G\vartriangleright H=4=\{1, C_{4}, C_{2}, C_{4}^{-1}\} $$ 正規部分群,   
$$G\supset A=m=\{1,m_{x}\}$$ 非正規部分群 の例に適用してみよう:  

$$H\cdot 1= \{1, C_{4}, C_{2}, C_{4}^{-1}\}=4$$,      $$H\cdot m_{x}= \{1, C_{4}, C_{2}, C_{4}^{-1}\}\cdot m_{x}=\{m_{x}, m_{x}C_{4}^{-1}, m_{x}C_{2}, m_{x}C_{4}\}$$ なので,確かに $$G=H\cdot 1\cup H\cdot m_{x}$$ と展開されるが,$$G$$の要素の積則は,例えば,$$ (C_{2}m_{x})\cdot (C_{4}m_{x})=C_{2}\cdot (m_{x}C_{4}m_{x}^{-1})m_{x}\cdot m_{x}=(C_{2}C_{4}^{-1}\cdot 1)=(C_{4}\cdot 1) $$

つまり,$$C_{4}$$と$$m_{x}$$入れ替えるのに,$$ C_{4}\longrightarrow (m_{x}C_{4} m_{x}^{-1})=C_{4}^{-1} \in H $$ の写像が必要であり,積則は半直積になる.$$4mm=4\rtimes m (=H\rtimes A)$$

 

 

 

■外部半直積

2つの群 $$H$$ と $$A$$(必ずしも与えられた群の部分群である必要はない)と群準同型 $$f_{a}: A \mapsto \textrm{Aut} H$$が与えられると,同様に,$$f_{a}$$ に関する $$H$$ と $$A$$ の外部半直積と呼ばれる新しい群 $$H⋊A$$ を構成することができる.これにより,幾何学空間と異なる次元を付与した群へ拡張ができる.

 

■リース積(wreath product)

群論のリース積は,半直積の積則をさらに拡張したものである.

 $$G$$と$$A$$をそれぞれ群,$$X$$を左$$G$$集合($$G$$の要素$$g$$が$$X$$の左から作用する$$gX$$)とする.この状況下で,群準同型$$f: X \mapsto \textrm{Aut} A$$を考える.写像の集合$$ f\in W $$を用い,半直積$$W\rtimes G$$($$A$$の$$G$$による非制限リース積)が定義でき,$$G$$は$$W$$に群同型である.$$(g\cdot f)(x)=f(g^{-1}\cdot x)$$

$$g\in G$$も$$f\in W$$も$$X$$に作用する写像(演算子)である.

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

(引用)以下のサイトにある問題と解説は,リース積の理解に大変役立ちます:

 

https://note.com/ron1827/n/nd464de95a750

 $$ X$$を左$$ G$$集合としというのがわかりにくいのですが,$$gX=A$$,  $$g\in G$$の型のイメージです.

リース積

0